2015年2月アーカイブ

私が、弁護士をやってきてこの世の中で生きていく上で何が大切かいつも考えさせられます。私は、それは真実であると、躊躇なく答えます。真実が最も大切なものです。人をやる気にさせ、一生懸命にさせるのはそれが真実だからです。人は人を裏切りますが、真実は人を裏切らない。真実ほど強いものはありません。冤罪事件で、何十年もかかって、無罪判決や再審無罪を勝ち取ることがあります。その被告人や支援する家族やそのほかの人々を支えるのはそれが真実だからです。ウソは、人を動かしません。なにより、ウソをつく人を動かしません。それどころか、一度ウソをつくと、その代償は極めて大きいものがあります。警察の自白の強要に屈してウソをつくと、これを覆すことは極めて困難で、一生獄につながれることになりかねません。私もことわざは利用しますが、日本において一番嫌いなことわざは「嘘も方便と」いうことわざです。キリスト教の国にくらべ日本人は小さなうそをつくことについて罪の意識を感じないともいわれます。しかし、これは間違いです。小さな嘘ほど、本当のことを言えなくなってしまいます。小さな嘘ほど、ばれたときに、「なんでこんなウソをつくのか。こんな程度のことでもウソをつく人なら、他にどんなウソをついているか分からない」ということになり、信用も人格評価も全く失われます。一つウソをつくと、そのウソをばれないように、次から次へとウソをつかなければならなくなります。どんな賢い人でも、ウソをばれないようにすることは不可能です。裁判の証人尋問では、弁護士は証人に次々とウソをつかせ、その矛盾を突いたり、それがウソであることの証拠を突きつけて真実を明らかにします。真実は、それ自体が、明らかになるような力を持っていると、私は弁護士の仕事を通じて確信しています。なによりも真実を大切にすること、それが私の信条です。
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